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2023年1月1日日曜日

謹賀新年、2023



あけましておめでとうございます。


今年はこちらのブログにも学会や講演情報をアップしていこうと思っています。

基本的に最新のパワーエレクトロニクス情報を毎日、下記のTwitterにて情報更新しております。


https://twitter.com/YamamotoPENU


昨年もどんどん仕事が大きくなり、皆様のサポートに感謝する日々でした。
いつもありがとうございます。
皆様の応援を背に、よい社会へ向けた社会実装を頑張って参ります。

本年も名古屋大学パワーエレクトロニクス研究室を、どうかよろしくお願い申し上げます。


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2022年4月26日火曜日

現状の研究室活動のアナウンス方法



こちらのブログでは、研究室に関する情報更新ができず申し訳ございません。
基本的に毎日、下記のTwitterにて情報更新しております。


https://twitter.com/YamamotoPENU


また、現在、私のメールアドレスがたまに弾かれると伺いました。

下記のメールをお試し頂き、追って、新しくなったメールアドレスも連絡いたします。


yamamotoecs@gmail.com


新しいカタチでの広報活動を模索中です。

是非、フォローよろしくお願いいたします♪


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2022年3月13日日曜日

女性教員(助教)募集中!



現在、名古屋大学パワーエレクトロニクス研究室も含めた電気系分野において、女性教員(助教)を募集しております。

自由度の高い研究室で明るいメンバーと共に、楽しく研究生活を送ることができます。

是非!

お気軽にお問い合わせくださいませ!



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2022年2月23日水曜日

秘書・事務職員さん募集中!



現在、名古屋大学パワーエレクトロニクス研究室では、秘書さんと事務職員さんを募集しております。

楽しい職場で楽しく一緒に働きましょう♪

是非!

お気軽にお問い合わせくださいませ!



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2022年1月25日火曜日

電気学会東海支部大会事務局職員さんの募集です



名古屋大学パワーエレクトロニクス研究室内でご業務頂く、電気学会東海支部大会(リンク先は前年度の大会HP)の事務局をご担当頂く職員さんを募集しております。

ご担当の今岡先生に聞いたら、下記の様なご対応をお願いさせて頂くそうです。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
さて、早速ですが簡単な業務内容についてご説明いたします!
タスクとしてはいろいろとございますが以下がメインとなります。
① 銀行・カード決済・コンビニ決済等のお金に関する経理業務
② HP立ち上げ等のホームページ編集・広告依頼業務
③ 学会参加者のメール対応
④ 学会開催地である岐阜大学の先生方と現地の調整
⑤ 他の事務局との日程調整や審議事項の調整
⑥ 引継ぎ業務資料作成(エクセルやワード)

などが学会の事務局としての大まかな業務内容となります。
また、労働条件としてはっきりしたものはまだ上がってきていないのですが
・2022年3月頃から2023年2月頃(約1年間)
・基本的には時給での労働となり前例としては週約19時間程度の勤務
・雇用主は電気学会
・時給ははっきりしておらず少なからず約千円以上
・研究室にはスタッフも多くおり、サポートもできる限り行えます。

基本的には労働場所は名古屋大学の山本研究室内で活動をしていただくことになるかと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・


そんな、感じです。(笑)

ご興味のある方、是非、お問い合わせくださいませ!

mailto:m.yamamoto@imass.nagoya-u.ac.jp


今日の写真は、ご一緒にお仕事する予定の研究室事務スタッフのご紹介。


皆さん、優しくて素敵な方で、サポートして頂けるハズです。

一緒に楽しくお仕事しましょう♪


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2022年1月1日土曜日

謹賀新年、2022


あけましておめでとうございます。


昨年は、本当に激動の時代を生きていることを実感する1年でしたが、それ故に日々の何気ない幸せの有り難みを感じることができた気がします。

その小さな幸せを積み上げる日々が、世界をより良い方向へ導く大きな流れとなることを願ってやみません。

今年1年の皆様のご健康と幸せを記念しております。

本年も名古屋大学パワーエレクトロニクス研究室を、どうかよろしくお願い申し上げます。



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2021年12月27日月曜日

(2/10締切)クラウドファンディングへのご協力のお願い



12月20日にREADYFOR様と名古屋大学の支援によりクラウドファンディングを立ち上げました。
プロジェクト題目は「高校生と名大サーモンを作る|SDGsに向き合う陸上養殖プロジェクト」です。


下記サイトにてプログラム内容を確認することができます。

https://readyfor.jp/projects/meidaisalmon

5年前から何度も交流していた山口県立大津緑洋高等学校との研究成果が、今、ここに帰結しました。
新時代型陸上養殖システムの提案となります。

是非、ご協力よろしくお願い申し上げます!


名古屋大学の公式HPにも紹介されました!

#個人でも企業様の寄附金という形でもどちらでも対応可能でございます!


【活動のご紹介】
    ■研究室へのアクセス

    新研究棟への道案内は、こちらの投稿を参考にされてください。

    本山駅からタクシーで「東山公園テニスセンター」前のミニストップというコンビニを目指して、C-TECsの裏手に来られた方が、暑い中、歩かれる距離が短くて良いかと思います。
    本山駅のタクシー乗り場にタクシーが居ない場合は「つばめタクシー(052-203-1212)」にて呼ばれれば直ぐに来るはずです。


    ■出版物

  1. 「パワーエレクトロニクス回路における小型・高効率設計法 ~昇圧チョッパから結合インダクタの設計まで~ (設計技術シリーズ)」、科学情報出版
    アマゾンサイトはこちら
    紹介ページ<http://masayamamoto.blogspot.jp/2014/11/blog-post_12.html

  2. 「テスラ「モデル3/モデルS」徹底分解【インバーター/モーター編】」、日経BP社
    書籍紹介ページはこちら
    紹介ページ<http://nagoyapelab.blogspot.com/2020/03/3s.html


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2021年9月16日木曜日

【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その5)



 <3.2.4 PCU(4代目プリウス)の分解解説:下層部>
 欧州の自動車販売に係る二酸化炭素排出量規制に対し、2011年夏には欧州の自動車メーカ5社(VW、ポルシェ、アウディ、ダイムラー、BMW)は協定による48V化に際した業界標準規格であるLV148を策定し、48V化技術に対する研究開発の集中を図った。さらに、業界標準規格を受けて、前述の通りVDA(ドイツ自動車工業会)が品質管理規格「VDA320」を策定、さらに安全に関して国連欧州経済委員会(UNECE)において、UN規則No.100を採択しているすべての国で、2013年7月15日以降に新規認可を取得する車両および再充電可能エネルギー貯蔵システム(REESS)に「電気安全に関する要求事項(UN/ECE R100)」を義務付けられることとなった。具体的には、絶縁に対する安全性に規制をかけた形である(2)。すなわち、欧州サイドより、48V以上の電源については、絶縁対策が必要であるという法的規制を明記されたことを意味する。もちろん、この規制は200V系大容量バッテリを有するプリウスにも適用される。その法的規制を技術面から直接感じることができる装置が、以下に図説を行う絶縁DC-DCコンバータである。
図3.20に2代目プリウスで採用された絶縁DC-DCコンバータの写真を掲載する。2代目の絶縁DC-DCコンバータも豊田自動織機が担当している。また、この絶縁DC-DCコンバータの等価回路図を図3.21に示す。この回路は入力側(1次側)を4つのパワー半導体で構成するフルブリッジDC-DCコンバータとなっている。直列に2つのパワー半導体が接続されている形をブリッジという単位で示し、2つの場合をハーフブリッジ、このハーフブリッジが2つ並列化した回路をフルブリッジと呼ぶ。ハーフブリッジ型は、低コストであるが出力電圧を入力直流電圧値の半分しか使えないのに対して、フルブリッジ型は入力直流電圧値をそのまま出力可能であるが、コストアップを招く。プリウスの進化に伴う要求としては、PCUの低コスト化と部品占有面積の低減化であったために、パワー半導体を2つ程度の使用に縛られ、後述する4代目プリウス用絶縁DC-DCコンバータに繋がっていく。図3.20を見ると、部品点数が多く、占有面積が大きくなっていることが分かる。こういった懸念を解消すべく、4代目プリウス用絶縁DC-DCコンバータは、別回路方式を採用した。



図3.22に4代目プリウス用絶縁DC-DCコンバータの外観を示す。この絶縁DC-DCコンバータは、4代目プリウス用PCUの下層部に絶縁DC-DCコンバータ用冷却流路に対して裏側から貼り付けられる形で設置されている。前述のパワー半導体を4つ使用することによる専有面積の問題を払拭するため、この絶縁DC-DCコンバータはアクティブクランプ方式フォワードコンバータの回路を採用し、パワー半導体は、フォワードコンバータのメインスイッチと、アクティブクランプ用の補助スイッチの2つのみ使用することで、小型化を実現している。図3.22のST Microelectronics製MOS-FETの右側(耐圧710V・69A)がフォワードコンバータのメインスイッチであり、左側(耐圧600V・17A)が補助スイッチとなる。これら2つのパワー半導体は、制御基板上のアナログICによって制御が行われる。主パワーラインと異なり、あえてアナログ制御で豊田自動織機がIC化まで内製した理由としては、フォワードコンバータ全体を閉じて開発して、トヨタ側へシステムとして納入したかったという意図がある。汎用マイコン等の使用によるディジタル制御化により、システム下層のフォワードコンバータ構成部品のみに完成車メーカであるトヨタ自動車にその採用を限定されることを恐れ、あえてリスクを背負った形でその技術をシステム全体に留め、今回の成功に繋げている。アナログ制御ICの右手側のコンバータ制御指令用マイコンは、フォワードコンバータ制御の上位層の制御を担当し、主にコンバータとしての走行状態に応じた出力電力等の制御指令を司る。

この絶縁DC-DCコンバータの占有面積は後述する最終システムへの大きな恩恵に寄与しているが、もう一つのアプローチとして、200Vライン側(1次側)に対して高周波トランスを介した後の12Vライン側(2次側)においても、その配慮の跡が見られる。図3.20に2代目プリウス用絶縁DC-DCコンバータの写真を見ると、高周波トランス後段の整流ダイオードブリッジでは、等価回路としては2つのダイオードのみで構成されているにも関わらず、6つのダイオードにより整流器が構成されている。この絶縁DC-DCコンバータではダイオードを3つ並列接続することでそれぞれのダイオード電流を1/3に分流し、熱負担を軽減している。4代目プリウスでは補機類用DC-DCコンバータにおいて、特に熱で問題となるダイオードブリッジ部とトランスコア部における熱対策に独自の技術を導入している(3)。図3.23に、前述の制御基板を取り外した状態での絶縁DC-DCコンバータの外観を示す。この写真から、4代目プリウスでは高周波トランス後段の2次側ダイオードブリッジは、2代目とDC-DCコンバータの出力は変化がないにも関わらず、4個のダイオードのみで構成されていることが分かる。この新しいプリウスのDC-DCコンバータ担当した豊田自動織機は、ダイオードの熱対策に関してダイオードを納めているサンケン電気と共同設計を行っている。具体的には、ダイオードブリッジに使用するダイオードにおいて、従来ではダイオードから冷却用アルミケースまでの熱抵抗が、回路構成上、絶縁確保が必要なため、熱伝導率の低い樹脂板を使用しなければならず、図3.24左図の様に非常に大きくなる問題があった。しかしながら、図3.25に示すように、ダイオードのアノード・カソードを入れ替えることで電流が冷却用アルミケース層に流入することを防ぐことが可能となり、図3.24右図の様に、絶縁に必要であった樹脂板、銅板を廃することで、熱抵抗要素低減構造を実現している。さらに、アノード・カソードを入れ替えることで、絶縁不要で金属スプレッタを冷却可能としている。上記の熱対策変更前と変更後における電気回路で表現した概念図を図3.26に示す。この様な対策により、ダイオードブリッジにおける部品占有面積を削減し、フォワードコンバータ全体のシステム小型化に貢献している。




また、この4代目プリウス用絶縁DC-DCコンバータは、基板実装型を構成しており、具体的には、基板によるプリント配線に対して部品を挟み込む形で、全ての電気回路システムを構成している。図3.23におけるトランスやインダクタは、基板を挟み込む形で構成されており、トランス、インダクタの上側コアを取り外した状態が、図3.27の左側図となる。この状態で基板上に見えている配線は、2次側配線となっており、12Vラインの電力導通を担う。これに対して、基板を裏返すと200Vラインの配線が確認でき、フォワードコンバータの巻数比は1次側:2次側は4:1となっている。こういった基板実装型の電力変換器は、車載応用時に下記の2つの問題に直面する。

(1) パワーライン基板の熱サイクルによる反りによる信頼性の低下
(2) 量産時の組み付け時(ボルト締め等)による反りによる信頼性の低下

 これらの問題点を払拭すべく、この基板実装型コンバータにおける基板の寿命設計が非常に高い技術ハードルを乗り越えていくことが完成車メーカへの採用を目指すために肝要であると言える。
また、トランスの冷却についても独自技術を導入している。4代目プリウス用絶縁DC-DCコンバータにおいて、絶縁トランスは前述の通り、配線銅板にて巻線パターンを形成し、さらに高放熱厚銅基板を上下の2つのコアで挟み込んだ構造としている。この様な構造とすることで、巻線部は放熱シートを介してアルミケースで冷却し、高周波トランス用コアや平滑用インダクタは図3.28に示すように、アルミケースに直接接触させることで放熱を実現している。その様子を図3.29に示す。この写真は図3.27の左図状態から、さらに基板を取り外した状態であり、高周波トランスや平滑用インダクタの下側コアが、アルミ冷却ケースに埋没されており、効果的なコア冷却が可能となっている。



また、熱対策とコストダウンの関係を良く示した状況を図説するため、再度、図3.23の写真に戻る。通常はパワー半導体の冷却のために、左上部にある様な放熱絶縁シートをアルミ冷却ケースとパワー半導体の隙間に挿入してボルト留めする。さらに、その放熱効果を高めるため、パワー半導体と放熱絶縁シートの間に、シリコングリースを塗布することが一般的である。しかしながら、車両の量産時において、そのグリース塗布は工数の増大を意味する。今回、4代目プリウスが採用した絶縁DC-DCコンバータには前述の通りアクティブクランプ方式フォワードコンバータとなっている。この回路方式では、前述の通り、電流負担の大きいメインスイッチと、負担が比較的軽い補助スイッチから構成される。トヨタ自動車は、今回は負担の大きなメインスイッチ側のみにシリコングリースを塗布することとし、補助スイッチにおける熱対策を結果としてコストダウン化していることが見て取れる。
こういった小型化、低コスト化要求に対してにじり寄る様な技術確信により、結果として最終システムである車両の付加価値向上に大きな役割を演じている4代目PCUの、実際の役どころについて稿を改めて報告する。



【参考文献】
(1)トヨタ自動車ホームページ,(https://toyota.jp/)
(2)山本,自動車用48V電源システム 欧州勢の思惑と日本企業が目指すべき技術開発の方向性,サイエンス&テクノロジー株式会社,ISBN978-4-86428-143-0,2016年9月28日刊行.
(3)小澤,“新型プリウス向けDC-DCコンバータの熱設計,”テクノフロンティア2016技術シンポジウム,熱設計・対策技術シンポジウム資料,F6-2-1~F6-2-21,2016.




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【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その4)



 <3.2.3 PCU(4代目プリウス)の分解解説:中層部>
 前述した中層部外観から実際に内部構造を確認するためには、上下合わさった冷却用アルミケースを開く必要がある。図3.13に確認できるアルミケース部は、丁度、弁当箱の蓋の状態で中層部構成部品に覆いかぶさっており、この“蓋”を開いて弁当箱の中身を見た写真が、図3.14となる。写真上部が蓋を裏側から見た構成部品、写真下部が弁当箱の中身となり、蓋の部品と弁当箱の部品が、隙間に重なり合って組み合わされる中層部を構成する形となっている。


 4代目プリウス用PCUにおいて、最も特徴的な部分がこの中層部であり、PCUの小型化に大きく寄与している階層となる。その最も大きな役割を果たしているのが電流センサである。4代目プリウスでは図3.6に示すように合計7個の電流センサを用いている。図3.15に三相インバータ・三相整流器入出力端子上部に設置されている旭化成製電流センサの外観を示す。この写真にある通り、7個のホールセンサと電流センサICにより、各部の電流検出を行っている。これに対して3代目プリウスでは、インバータ出力側の3個と整流器入力側の3個の合計6個の電流センサでPCUの制御を行っていた。4代目プリウスにおいて電流センサを1個追加した効果として、下記の2点が挙げられる。

(1) 昇圧チョッパ、三相インバータ、三相整流器を通過する全ての電力を監視することができるようになったため、定常動作条件における平滑フィルムキャパシタの最適化設計が可能となった
(2) 昇圧チョッパの制御に対し電流フィードバックを加えたことで高速応答化を実現し、過渡応答対応の平滑フィルムキャパシタ容量を最小化できた


この様に、電流センサの導入により、PCUの体積の多くを占める平滑フィルムキャパシタの小型化を実現していることが分かる。4代目プリウスではこの昇圧チョッパにおけるインダクタ電流の検出方法も特徴的となっており、図3.16の様に、直流成分と交流成分を同時に持つインダクタ電流に対して、平均電流のみを読み取っている。しかしながら、昇圧チョッパにおいてはインダクタの磁気飽和に対する保護の視点からピーク電流を観測する必要があるが、4代目プリウスでは、昇圧チョッパのピーク電流を、観測ではなく平均電流値とIGBTのターンオン時間から予測計算している。また、昇圧チョッパ制御において、3代目プリウスでは出力電圧一定制御を行う電圧モード制御を行っていたが、4代目プリウスでは電流センサを導入したことで電流値の制御要素のフィードバックが可能となり、電流モード制御の採用が実現し、昇圧チョッパの応答時間を、3代目プリウスの500μsから4代目の200μsへと大幅に削減することに成功している。これにより必要出力キャパシタ容量を削減し、平滑フィルムキャパシタの大幅な小型化(3代目:888μF → 4代目:471μF)を実現した。平滑フィルムキャパシタについては、3代目プリウスも4代目プリウスも双方、パナソニック製のものを採用している。



図3.17には、同じくパナソニック製平滑フィルムキャパシタと、昇圧チョッパ用インダクタの外観を示す。この平滑フィルムキャパシタは、昇圧チョッパの入力段におけるキャパシタで図3.6ではCiにあたる。この平滑フィルムキャパシタは前述のフィルムキャパシタとは異なり、印加電圧は大容量バッテリ電圧の200Vと、高くない。よって昇圧チョッパ後段の600Vを印加する平滑フィルムキャパシタと比較して、より誘電体の膜厚を薄くすることで小型化を実現している。

また、昇圧チョッパ用インダクタは、Fe-Si圧粉磁心であり、コストと磁束密度に性能を絞っていることが分かる。本件についても次章にて後述するが、4代目プリウスではこのインダクタは巻線内部においてギャップを1つ(コア1周あたり2つ)を確保しており、インダクタンス値は240μFである。コストダウンのためと考えられるが、3代目プリウスの昇圧チョッパ用インダクタは、全て樹脂封止されていたが、この4代目プリウス用では、コア鉄心が露出している。霧吹きで水を付けて、1ヶ月程度放置したが、表面は錆びてきたが性能には問題は発生しなかった。よって、このコアを露出させた措置も、4代目プリウスにおけるコストダウン化の正常進化であると言えよう。
次に、下層部の図説にも少し被る部分があるが、PCUの冷却方法について解説する。図3.18に4代目プリウス用PCUの冷却配管の様子を示す。このPCUは水冷方式であり、PCUから出ている配管パイプを冷却水が流れて各構成部品の冷却を担う。まず、冷却水は下層部の絶縁DC-DCコンバータを冷やすため、まず図3.18における配管パイプ①DC-DCコンバータ用冷却配管ライン(入力)から流入する。そして絶縁DC-DCコンバータの冷却を終えた冷却水は② DC-DCコンバータ用冷却配管ライン(出力)から流出する。その後、図3.7の配管ライン接続管を通って、③ 主パワーライン用冷却配管ライン(入力)へ流入する。この配管ライン接続管は、図3.18では取り外してあるが、実際には樹脂パイプによって図3.7の様に②の配管と③の配管を接続している。③ 主パワーライン用冷却配管ライン(入力)に流入した冷却水は両面冷却パワーカードと呼ばれる新しい冷却方式により、主パワーラインに使用される昇圧チョッパ、三相インバータ、三相整流器におけるパワー半導体の冷却を行う。



図3.19に両面冷却パワーカードの実際の写真を示す。冷却水は③ 主パワーライン用冷却配管ライン(入力)に流入した後、④ 主パワーライン用冷却配管ライン(出力)から流出していくが、その間、図の両面冷却器内部を通過しながら、パワー半導体の冷却を行っている。この冷却器が両面冷却パワーカードと呼ばれているのは、パワー半導体を冷却器によりサンドウィッチ構造で挟み込んでいることに端を発する。実際に図3.19を確認すると、冷却器に黒いパワー半導体が挟まっていることが分かるであろう。サンドウィッチをイメージすると分かりやすいが、サンドウィッチのパンの部分が冷却器であり、挟まっているハムの部分がパワー半導体である。このパンの部分を冷却水が流れることで、効果的にハムであるパワー半導体を両面から冷却することができる。ちなみに、昇圧チョッパ用インダクタは図3.19の点線枠部分にマウントされており、アルミ冷却フレームに直接樹脂を介して接続されている。従って、前述の絶縁DC-DCコンバータの冷却時に同時にインダクタも冷却していることが分かる。図3.17において昇圧チョッパ用インダクタの巻線が露出しているが、これは熱源である巻線部を効果的に冷却させるため、あえてこの様な構造設計がなされていると考えられる。


【参考文献】
(1)トヨタ自動車ホームページ,(https://toyota.jp/)
(2)山本,自動車用48V電源システム 欧州勢の思惑と日本企業が目指すべき技術開発の方向性,サイエンス&テクノロジー株式会社,ISBN978-4-86428-143-0,2016年9月28日刊行.
(3)小澤,“新型プリウス向けDC-DCコンバータの熱設計,”テクノフロンティア2016技術シンポジウム,熱設計・対策技術シンポジウム資料,F6-2-1~F6-2-21,2016.



※ 【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その5)に続く。



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【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その3)



 <3.2.2 PCU(4代目プリウス)の分解解説:上層部>
 早速、4代目プリウス用PCUを上層部から開けていく。図3.9にPCUのアッパーカバーが取り付けられており、ボルト留めされている。ボルトを外し、アッパーカバーを外すと図3.10の様な基板が顔を出す。この基板面は、主にPCU中層部におけるキャパシタ、各相電流、パワー半導体(IGBT)の状態検出や基板とパワー半導体の接合端子部が搭載されている。また、後述するIGBT駆動用の電源もこの基板面の部品により具現化される。図3.10に示されたPCUに使用されるIGBTの数と同数である14個並んだ接合端子部を一つ取り出し、上部樹脂カバーを外すと図3.11に示すような構成となっている。この写真にみえる5つの端子はIGBTの駆動や状態検出を行う各端子部へ接続される。この接合端子部は基本的には生産工程においてパワー半導体各端子と制御用基板とを力学的に接合させ半田等の工程を削減するために有効な端子部となっており、半田剥がれ等に対する耐振性にも優れる。欧州はpress fit方式という各基板を力学的に端子接合を実現する手法を車載としても多用しているが、プリウス用は信頼性に優れた構造となっている。このPCUに採用されているIGBTはケルビンソース端子(通常のパワーラインに対して検出用の2つの信号線を持つ)接続されることから、ゲート駆動用端子、温度検出端子、過電流検出端子と合わせて5つの端子を持つ。そして図3.11を確認すると、それぞれの信号端子には、S字型のヒューズが接続されていることが分かる。このヒューズに直流電流を注入して実験を行うと、S字形成部が高熱により赤くなり、16Aにて熱開放された。




上層部の基板を裏返すと、図3.12の様な構成となっている。この基板面は、主にIGBTの駆動を司る部品が実装されている。具体的には、フォードバック制御系を担うDSPやFPGA、そしてパワー半導体であるIGBTの駆動を行うゲート駆動回路である。全面の状態検出値を状態信号としてDSPに入力し、指令値に追従させる形でフィードバック制御を行い、DSP出力のパルス信号をFPGAによってIGBT駆動用の最適なパルスに分割、展開していると考えられる。また、DSPでは後述する昇圧チョッパのインダクタ電流の予測計算にも使われていると考えられる。IGBTゲート駆動用ICは図3.6に示すように、PCUにおけるIGBTの必要個数である14個に対応している。


上層部の基板を外して、これから分解する中層部を見ると、図3.13の様な外観となる。各部検出部、駆動用端子がこれまであった上層部へ向けて伸びていることが確認できる。次に、中層部の分解解説を行う。


【参考文献】
(1)トヨタ自動車ホームページ,(https://toyota.jp/)
(2)山本,自動車用48V電源システム 欧州勢の思惑と日本企業が目指すべき技術開発の方向性,サイエンス&テクノロジー株式会社,ISBN978-4-86428-143-0,2016年9月28日刊行.
(3)小澤,“新型プリウス向けDC-DCコンバータの熱設計,”テクノフロンティア2016技術シンポジウム,熱設計・対策技術シンポジウム資料,F6-2-1~F6-2-21,2016.



※ 【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その4)に続く。



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【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その2)



3.2 PCU(4代目プリウス)の分解解説
 <3.2.1 PCU(4代目プリウス)の概要>
 まず、これから分解する4代目プリウス用PCUの中に収められている電気系システムを確認していく。図3.5に、4代目プリウスにおける電気系システム模式図を示す。この電気系システムは、大きく2つに分割される。1つは、車両駆動に直接関与する主駆動電源ラインであり、量産ハイブリッド車として電気駆動により車両駆動を管理させた最初の車であるプリウスのアイデンティティは、この主駆動電源ラインにあると言える。もう1つは、補機用電源ラインとなる。これはプリウスに搭載される200V系バッテリ(202V:ニッケル水素バッテリ、207V:リチウムイオンバッテリ)と補機類(オーディオ機器、ライト類、パワーウィンドウ等)への電力供給を担う12V鉛蓄電池を仲介する電源ラインである。ここで仲介、と記載したが、実質的には電力方向としては、200V系バッテリから12V鉛蓄電池への電力供給方向のみ、となる。この理由として、プリウスの発電機電力は200V系バッテリに回生されていること、そして、プリウスは積極的にEV走行モード(特に発進時)を採用していることが挙げられる。特にEV走行モード時において、運転者にとっての重要な補機装置はパワーステアリングである。プリウスはトヨタ自動車として初めて電動パワーステアリング(EPS : Electric Power Steering)を採用した車であるが、このEPSだけで1〜2kWの出力を要求する。よってEV走行モード時では、この電気的な負荷が12V鉛蓄電池にぶら下がっているため、他の負荷への供給も担う鉛蓄電池の負担が大きくなってしまう。この負担低減のため、大容量バッテリから鉛蓄電池への電源供給を行うことで、スタンドアローンの車両内部において、安定した電源ラインの構築を実現している。


ここで、PCU内部に収められている電気機構としては、主駆動電源ラインにおける昇圧チョッパと三相インバータ(三相整流器含)、補機類用電源ラインの絶縁DC-DCコンバータとなる。実際には模式図に示した昇圧チョッパと三相インバータは図3.6に示すような等価回路となっており、チョッパはインダクタやキャパシタの受動素子と2つのパワー半導体、三相インバータは6つのパワー半導体、三相整流器も6つのパワー半導体から構成される。


4代目プリウス用PCUの外観を図3.7に示す。本書では、この4代目プリウス用PCUを3つの階層に分けて図説を行う。3つの階層は図3.5に示してある通りであるが、具体的には、上層部(第1層)は、PCUの制御部を司る制御基板部であり、中層部(第2層)はパワー駆動部である昇圧チョッパとインバータ、整流器を内蔵している。下層部(第3層)は大容量バッテリと補機用電源である12V鉛蓄電池を仲介するDC-DCコンバータとその冷却機構が収まる。
 PCU全体としては、3代目プリウス用PCUが12.5Lの体積で重量は13.5kgであったのに対して、4代目では体積は8.4Lに、重量は11.9kgへと大幅に削減されている。ただし、4代目プリウス用PCUの出力自体は、最大電圧が3代目の650Vから600Vへ抑制され、最大電流も180Armsから170Armsへ変更されている。



 次に、PCUを分解した全容を図3.8に示す。一番左側がPCUのアルミ冷却ケースであり、そこから順番に上層部のECUとパワー半導体(プリウスはIGBT : Insulated Gate Bipolar Transistorを採用)駆動回路の基板、そして中層部を構成するパワー半導体群と、昇圧チョッパ用インダクタ、キャパシタが並んでいる。さらに下層部においては、図3.8のインダクタがマウントされているアルミケースの裏側に冷却のため貼り付けられる形で絶縁DC-DCコンバータが設置されている。昇圧チョッパやIGBT群から上側(上層部と中層部)はデンソー製、絶縁DC-DCコンバータは豊田自動織機製となる。3代目プリウス用PCUからこの4代目プリウス用PCUへの進化のポイントとして、
(1) 電流センサを1個追加することでフィルムキャパシタを小型化を実現
(2) 絶縁DC-DCコンバータを基板実装化して小型化を実現
(3) IGBT冷却について両面冷却方式を採用することで小型化を実現
という3点が挙げられるが、詳細は後述していく。今、上層部から順番にPCU分解の図説を仔細に行う。



【参考文献】
(1)トヨタ自動車ホームページ,(https://toyota.jp/)
(2)山本,自動車用48V電源システム 欧州勢の思惑と日本企業が目指すべき技術開発の方向性,サイエンス&テクノロジー株式会社,ISBN978-4-86428-143-0,2016年9月28日刊行.
(3)小澤,“新型プリウス向けDC-DCコンバータの熱設計,”テクノフロンティア2016技術シンポジウム,熱設計・対策技術シンポジウム資料,F6-2-1~F6-2-21,2016.



※ 【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その3)に続く。



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【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その1)



 本章では4代目プリウスに搭載されたPCU(Power Control Unit)の詳細な分解解説を行う。特にPCU内でも車両駆動に係るパワーラインにおける分解解説を行い、4代目プリウスのPCUにおける設計思想を読み解く。

3.1 歴代プリウスにおけるPCUの変容
 プリウスは1997年12月にトヨタ自動車より発表されて以来、2018年現在において4世代目となるプリウスが市場投入されている。また、その派生版として、PHVグレードのモデルもその最先端技術導入が故に注目されているが、まずは従来のHEVにおけるPCUにターゲットを絞って議論する。
 4代連なるプリウスのPCUにおける車両駆動に係るパワーラインの電気システム概要を図3.1に示す。初代プリウスではこの図にある通り、288Vニッケル水素バッテリに直接インバータが接続され、33kWの電気系駆動出力を得ていた。しかしながら、駆動電力に直接関わるインバータ前段電圧であるニッケル水素バッテリは、走行状態、熱条件によってその電圧値は150Vから300V程度まで大きく変動する。この変動条件に依っては、アクセル開度に対して所望のトルクを得ることができず、走行性能の低下、燃費性能の低下を招く問題が顕在化した。


 これらの問題点を解決すべく、2代目プリウスでは、前述のインバータ出力を一定化させるため、モータ駆動用インバータと新しく搭載された202Vニッケル水素バッテリとの間に昇圧チョッパを挿入し、その出力電圧を500V一定制御させた。これによりニッケル水素バッテリの電圧変動に依存せず、どの様な条件でも所望の電力を確保することができ、走行性能や燃費性能が飛躍的に向上した。この性能は市場に高く評価され、初代プリウスでは年間販売台数が10万台に遠く及ばなかった状況に対して、2代目プリウスはその年間販売台数を50万台以上へ引き上げることに成功した(1)。一般的なプリウスのイメージは、この2代目に形成されたと言って良い。

 3代目プリウスは、2代目の正常進化型として、同じ202Vニッケル水素バッテリを搭載しながら昇圧チョッパの出力電圧を650Vに引き上げ、電気系における60kWの出力確保を実現した。歴代でも最大の出力を獲得しており、燃費性能も大幅に向上した。具体的にはJC08走行サイクルモードにおいて、2代目はその燃費性能が29.6km/lであるのに対し、3代目では32.6km/lと電気系出力の向上と燃費性能の引き上げが良く対応していることが理解できる。
 同じ視点で、4代目プリウスの電気系システムを見てみる。意外にも、3代目プリウスに対して昇圧チョッパの出力電圧は600V(スポーツモード条件)に抑えられ、電気系出力も52kWに留まっている。それでは、燃費性能は3代目プリウスと比較して下がるのか、と思いきや、4代目プリウスは歴代最高の40.8km/lを実現している。比較条件としては、4代目プリウスではEグレードというモデルを持っており、そのモデルは歴代で初めて207Vリチウムイオンバッテリを搭載していることは留意されたい。ただし、実際の電気系駆動においてはバッテリの種類ではなく出力容量しか見えてこず、バッテリの種類が性能に直接影響を及ぼす訳ではない。
 初代から、直接車両の駆動に関わるインバータ前段電圧値を引き上げる形で燃費性能を向上させてきた歴代プリウスは、4代目にきてインバータ前段電圧値を抑制しながらも、2代目から3代目の燃費向上率よりも遥かにその性能を引き上げる燃費性能を獲得している。本章では、これまでの正常進化型であったPCUから一歩引いたような性能を持つ4代目プリウス用PCUを分解することで、結果として、採集してうテムである車両における燃費性能の引き上げにどの様に寄与したかについて、図説を行う。




 詳細なPCU分解の前に、特に昇圧チョッパを搭載した2代目プリウスから4代目プリウスのエンジンルームの様子を図3.2から図3.4に示す。図3.2は2代目プリウスのエンジンルーム、図3.3は3代目プリウス、図3.4は4代目プリウスのエンジンルームの様子を示している。2代目から4代目にかけて変わらない部分は、エンジンルームの主人であるエンジンと電気系新機構であるPCUが並んで鎮座している点と、そのエンジンの冷却を司る冷却系と、PCUの冷却を司る冷却系が分割されている点である。2代目プリウスではエンジンの排気量は1,500ccであるのに対して、3代目以降はエンジン排気量を1,800ccまで拡大し、内燃機構における駆動に余裕を確保している。また、エンジンルーム内に占めるPCUの大きさが、代々、徐々に小型化していることが確認できる。このPCUにおける小型化恩恵が、プリウスをプリウスたらしめる付加価値に貢献している点は、後述する。


【参考文献】
(1)トヨタ自動車ホームページ,(https://toyota.jp/)
(2)山本,自動車用48V電源システム 欧州勢の思惑と日本企業が目指すべき技術開発の方向性,サイエンス&テクノロジー株式会社,ISBN978-4-86428-143-0,2016年9月28日刊行.
(3)小澤,“新型プリウス向けDC-DCコンバータの熱設計,”テクノフロンティア2016技術シンポジウム,熱設計・対策技術シンポジウム資料,F6-2-1~F6-2-21,2016.



※ 【技術読み物】4代目プリウス用PCU分解解説(その2)に続く。



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2021年7月16日金曜日

【技術読み物】歴代プリウスの電気システム(その3)



※ 本稿は【技術読み物】歴代プリウスの電気システム(その2)の続き。


2.3 歴代プリウスの電気システム

 <2.3.1 初代プリウス>
 これより、我が国で環境対策車として先頭を走るトヨタ自動車のプリウスに関する機構説明に入る。まずは初代プリウスから順を追って図説を行う。
 初代プリウスのエンジンルームを空けた様子を図2.7に示す。左側がエンジンであり、右側がインバータを含む電力制御装置となる。トヨタ自動車はこの電気系の制御装置をPCU(Power Control Unit:パワーコントロールユニット)と呼んでいる。インバータに使用されているパワー半導体はIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)であり、バイポーラ半導体であることから大電流に対応可能である。ただし、パワー半導体では、電流が流れている際の導通損失、さらにバッテリの直流電圧をモータ駆動用の交流電圧に変換する際にスイッチングを行うが、そのスイッチング時に発生するスイッチング損失が発生することで、インバータは発熱してしまう。さらにモータ部も、磁性部の鉄損と配線抵抗成分による銅損が発生し、やはり熱を発生する。これらは水冷方式により冷却を行っている。しかしながら、従来の内燃式駆動車両における冷却システムは使用できない。従来車両はラジエータからエンジンまで配管し、ウォータポンプにて冷却水を循環させることで、エンジンでの発熱をコントロールしていた。この冷却水のピーク温度は110℃に保たれる。しかしながら、インバータを含むシリコン半導体や電気部品にその温度の冷却水を循環させると、半導体やモータ磁性部における損失が大きくなり、さらに大幅にキャパシタ等の寿命劣化に直結してしまう。よって、この初代プリウスにはPCUやモータの冷却には別の冷却系統を用意している。エンジンのラジエータに並べる形で前に電気系冷却用ラジエータを用意し、それらをPCU、モータに配管し、エンジン冷却と同じくウォータポンプにて冷却水を循環させ、電気系全体の冷却を行っている。この冷却水温度はエンジン冷却系と異なり前述の理由から、65℃という低い温度に保たれている。



 初代プリウスの動力部における諸元を表2.4に示す。電気系の駆動を司るモータ定格出力は30kW、最大出力は33kWであり、その動力源は288Vニッケル水素バッテリである。(1.2V単位の単電池を直列に6個接続したものを1セルとして、これを40セル直列接続することで288Vを発生している。
 また、初代プリウスの動力部のシステム概略図を図2.8に示す。このシステムはトヨタ・ハイブリッドシステム(THS:Toyota Hybrid System)と呼ばれ、現在生産されている4台目プリウスに搭載されるTHS-IIの源流システムと言える。この図は図2.4のシリーズ・パラレルハイブリッドシステム概念図をより詳細に記載したものであり、各動力部、電力系統を仲介する制御器を表記している。電力系統の仲介は各回転機(M/G機構、発電機)に接続されたインバータにて行い、それらの入出力となる動力部、並びにエンジン出力の車両駆動側への動力部は、動力分割機構を介することで協調制御され、所望の車両動力を獲得している。前章にて紹介したとおり、プリウス・プロトタイプではこのニッケル水素バッテリの代わりに大容量キャパシタを搭載していた。バッテリとキャパシタの違いを図2.9に示す。この図より、キャパシタはそのエネルギー蓄積を電荷の蓄積により具現化する。よって、電流の入出力時にはキャパシタ電圧は変動する。ここで、図2.8を見てみると、発電機の電力とM/G機構の電力を仲介する位置に配置されているのがバッテリであり、これが大容量キャパシタであった場合、例えば減速時に発電機電力とさらに発電機として動作するM/G機構からの電流が流入してくることで、キャパシタ間電圧が過大に上昇することが考えられる。この過電圧により、電気システム各部品の耐圧を超えてしまう恐れがあり、電気系故障の原因となり得る。よって、初代プリウスでは大容量バッテリからニッケル水素バッテリへ変更することで、その問題点を解決している。



 しかしながら、初代プリウスには同じ視点での問題点が残った。新たに搭載したニッケル水素バッテリの電圧変動である。前述のキャパシタほどでは無くとも、THSの動作モードや温度等の環境変化に応じてバッテリ電圧も変化する。JC08走行サイクルモードにおいて、およそ150V〜300Vまで変化すると言われている。このバッテリ電圧変化、並びに温度変動により所望の出力を得ることができない場合がある。これによってユーザからはパワー不足等の声がフィードバックされており、2代目以降のプリウスではこの根本的な対策を施している。そのシステムがTHS-IIとなる。


 <2.3.2 歴代プリウスの電気システム比較>
 前項での初代プリウスにおける問題点の解決へ向けて、トヨタ自動車はどの様にアプローチしたのであろうか。その具体的な手法を分かりやすく電気システム概略図に落とし込んだ歴代プリウスの比較図を図2.10に示す。


 この図を見ると、初代プリウスでは288Vのニッケル水素バッテリを電源とし、直接インバータによりモータ駆動制御を行っていることが分かる。それ故、モータ出力はバッテリ電圧に直接依存していることが分かる。これに対して2台目では、同じくニッケル水素バッテリとモータ駆動用三相インバータの間に昇圧チョッパを配置している。これがTHS-IIである。昇圧チョッパとは、入力側(この図の場合には昇圧チョッパの左側の2配線が入力側)の直流電圧を出力側(この図の場合には昇圧チョッパの右側の2配線が出力側)の異なる値の直流電圧に変換する電力変換装置である。直流を直流に変換することから、DC-DCコンバータとも呼ばれる。そして、2台目プリウスではこの昇圧チョッパは202Vのニッケル水素バッテリの直流電圧を500Vの直流電圧に変換している。この昇圧チョッパをニッケル水素バッテリ前段に入れることで、モータ駆動用電圧を安定した値に維持することが可能となる。すなわち、温度変化や走行状態によるニッケル水素バッテリの電圧変化に、モータ出力は影響を受けないこととなる。これが、トヨタ自動車が考えたバッテリ電圧変動に対する技術的な問題解決アプローチの基本的な考え方である。
 そして、昇圧チョッパ導入の効果はもう一つのメリットを生み出す。このより高い直流電圧値の条件によりモータ駆動を行っていることから、同じ出力値の場合はモータに流入する電流値を抑制することが可能となる。そして、電流値が抑制できるということは、同じ応答速度条件と考えると、モータ巻線をより多く巻くことが可能となる。モータにおいて巻線の増加はアンペールの力の法則から出力の増加を意味する。2台目プリウス以降のモデルでは、この巻線増加によりモータ出力性能の向上を実現している。
 さらに、昇圧チョッパを導入することで、バッテリ電圧値を下げることが可能となる。THS-IIでは、昇圧チョッパによりモータ駆動用電圧を高く設定が可能なため、昇圧チョッパ前段となるバッテリ電圧は低く抑制可能である。具体的にはバッテリセル数を削減できることを意味する。これにより、コスト抑制、さらにバッテリ部の小型軽量化が実現可能となる。


 <2.3.3 THS-IIのメカニズムと動作>
 図2.10で示したTHS-IIのより具体的なシステム概念図を図2.11に示す。大容量バッテリ(ニッケル水素バッテリ、もしくは4台目上位グレードにおいては207Vのリチウムイオンバッテリ)と各インバータの間に昇圧チョッパを挿入し、モータ駆動用電圧を引き上げ、かつ安定化させている。図2.8のTHSと比較すると、昇圧チョッパの有無の違いのみとなっている。この昇圧チョッパの挿入により、駆動用モータの高出力化、並びに発電機の大容量化(17kW)を実現している。


 2.2.3項にて記載した通り、THS-IIでは詳細には13の走行モードを持つ。その走行モードと各システム構成要素の駆動状態を示した表を表2.5に示す。実際にはHV走行モードだけでも3つの走行モードを持つことが分かる。これらを細かく協調制御することで、高燃費な性能を維持しながらユーザが求める力強い走行性能も同時に確保している。


 この表2.5において、理解が難しい点は発電機の駆動に関する点である。前述の通りTHS-IIでは高電圧条件下で17kWの大容量発電機を搭載可能となったが、この発電機は発電機としてではなく、モータとして駆動する走行モードが2つだけ存在する。エンジンスタート時とエンジンブレーキ制動時である。エンジンスタート時は、プリウスはセルスタータを持たないため、この発電機をスタータとして機能させている。それ故、このエンジンスタート時では、電動モード時にモータとして動作を行っている。
 また、エンジンブレーキ制動時においては、大容量であるM/G機構が発電機として動作する。それ故、大容量バッテリが過充電となる状態となる。この状態を回避するため、発電機を負荷としてモータ駆動させることで過分なバッテリ電力を消費することで対応を行っている。この状態においても電動モード時はモータとしての動作を意味している。


【参考文献】
(1)BMW,(https://www.bmw.co.jp/ja/)
(2)VOLVO,(http://www.volvocars.com/jp)
(3)フォルクスワーゲン,(http://www.volkswagen.co.jp/ja.html)
(4)メルセデス・ベンツ,(https://www.mercedes-benz.co.jp/)
(5)ポルシェ,(https://www.porsche.com/japan/)
(6)トヨタ自動車,(https://toyota.jp/)
(7)本田技研工業,(http://www.honda.co.jp/)
(8)日産自動車,(http://www.nissan.co.jp/)
(9)マツダ,(http://www.mazda.co.jp/)
(10)スズキ自動車,(http://www.suzuki.co.jp/)
(11)自動車技術,自動車技術会,Vol. 71 No. 8, 2017.
(12)山本,自動車用48V電源システム 欧州勢の思惑と日本企業が目指すべき技術開発の方向性,サイエンス&テクノロジー株式会社,ISBN978-4-86428-143-0,2016年9月28日刊行.



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